約3万年の物語を刻む峡谷──層雲峡と石狩川のはじまりを訪ねて
2025.07.03

「The Series of 大雪100」―北海道の屋根、大雪山国立公園を核とする9つの市町で楽しめる、必体験の魅力的な100のアクティビティを厳選した特集です。

ビジターセンターで“ニセイ”を学ぶ
今回の探訪は、層雲峡ビジターセンターからスタート。
まずは資料を受け取り、「ニセイ(層雲峡峡谷)」の名前の由来や、
大雪山の成り立ちを事前に学びます。
地元に伝わるアイヌ語地名の背景を知ると、
その土地の歴史や自然との関係がより鮮明に浮かび上がってきます。

ジオラマで見る、大雪山の複雑な地形
ビジターセンターの中央には、立体地形模型(ジオラマ)が堂々と展示されています。
大雪山の連なりと、そこから流れ出す石狩川の源流域
──まるでドローンから俯瞰するかのように、
そのスケールが一目で分かります。
7月でも雪渓が残る再現ジオラマの迫力は圧巻。
「層雲峡峡谷の秘密」を紹介する8分間の映像も必見です。

柱状節理と石狩川が刻んだ風景
層雲峡は、火砕流堆積物が高温と圧力で固まった岩石が風化し、
石狩川により削られてできた峡谷。
写真には、特徴的な柱状節理と、
その下を流れるニセイチャロマップ川が写っています。
今年3月にも一部岩が崩落し、
自然が今もこの地形をつくり続けていることを感じさせます。

25km続く火山岩の造形美
柱状節理に加え、約25kmにわたって溶結凝灰岩の露頭が
石狩川沿いに続く地形は、日本でも非常に珍しいもの。
専門知識がなくても、「これは噴火でできた岩だ」と
納得できるほどの迫力です。
案内役は、層雲峡ビジターセンターの佐久間さん。
大抵の質問には即答してくれます。

“大函”に刻まれた二つの川の物語
知る人ぞ知る層雲峡の名所「大函(おおばこ)」は、
峡谷美の真骨頂。
石狩川本流とニセイチャロマップ川が合流する地点にあたり、
その文字も上の部分を隠してしまえば水が“箱”の中を流れています。
旧国道にかかる細い橋も、
かつての賑わいをしのばせる風景の一部です。

ヒグマも残す、大雪山の痕跡
今回の見学ルートでは、ヒグマ(キムンカムイ)が
木に「背こすり」した際の爪痕や毛も確認されました。
大雪山は野生動物の棲む地。
私たち人間は“お邪魔させてもらっている”という
謙虚な気持ちを、忘れないでいたいものです。

大雪山の終わり──火砕流が到達した場所
大雪山の“終点”とも言えるこの地点には、
火砕流堆積物が押し寄せた痕跡が見られます。

三本の川が注ぐ──大雪ダム
現在の石狩川の“源流”とも言えるのが、
ホㇿカイㇱカリ川・ユニイㇱカリ川・シノマンイㇱカリ川の三本。
それらが流れ込むのが大雪ダムです。
例年に比べて水位は低めで、6月に向けて徐々に増水するとのこと。
水位が最高になると、半島状に見えている陸地が“島”になるそうです。
なお、これらの写真はすべて林野庁と国交省の許可を得て
訪問・撮影されたもので、
ビジターセンターの正式な案内のもとに行われました。

高山植物が咲き誇る季節へ
岩と川が織りなす景観に加え、
大雪山はこれからの季節、高山植物が彩りを添えてくれます。
ダイナミックな地形を頭にインプットした後は、
ぜひ色とりどりの花々にも目を向けてみてください。
壮大な地形と深い歴史を感じながら、現代に生きる私たちが自然とどう向き合っていくべきか──。
層雲峡は、約3万年の歳月を語りかけてくる貴重なフィールドです。
自然、地学、文化──そのすべてを一度に体験できる層雲峡
あなたもこの場所で、“約3万年の物語”と出会ってみませんか?
センターでは季節ごとのイベントや自然観察会も多数開催されています。
現在開催中・近日開催予定のイベント情報は、下記公式サイトよりご覧いただけます。
層雲峡ビジターセンター公式イベント情報ページ
https://sounkyovc.net/event

層雲峡ビジターセンター
住所:上川町層雲峡温泉
開館時間:通年(9:00~17:00)
休館日:6月~10月 無休
11月~5月 毎月曜日(祝祭日の場合は翌日)
年末年始12/31~1/5